あなたが、知り合いのコネクションなどを通じて、取引を開始したいと考えている会社のトップと面会のアポイントを取ることができたとしましょう。そのような場合、日本の会社であれば、まずは相手のオフィスを尋ねるというのが一般的だと思います。しかし相手がタイ企業のオーナー社長の場合には「ではゴルフ場でお会いしましょう。平日で空いている日はありますか?」などと言われて面食らうことがあります。
日本であれば、まずは会社の紹介をして、次に具体的な商談をして、そしてビジネスがまとまろうという時に会食が入って、というのが通常の進め方だと思います。つまり、まずはビジネスの話があって、ビジネスがうまくいきそうな場合には、先々のために気心を知っておくために、おつきあいが始まるという順番です。しかしタイにおいては、先に個人的なおつきあいを構築してからビジネスの話に進む、という順番でことが進められるのです。
こういったビジネスの進め方はタイだけではなく、中国でも同様です。前職時代に取引先との交渉で中国へ行った時のことです。中国におけるあるカテゴリーのビジネスをその会社に任せるかどうかという大事な商談でした。現地到着後に軽く自己紹介があった後に、「では場所を変えて」と言われて近所の温泉施設へ行き、会食をして、翌日は朝からゴルフをして、という進め方で、私は「いきなり平日の昼間から温泉? ゴルフ?」といささか面食らいましたが、「ビジネスの話はまず、仲良くなってから」というのが中国流、そして華僑が実業界の中心を占めているタイでは、ビジネスカルチャーが中国と共通の部分が大きいのだと思います。
この、日本と中国やタイとの間のビジネスの進め方の違いは、エリンメイヤー教授による「カルチャーマップ」の指標の中の「信頼」の指標におけるタイと日本の位置を見ると、その背景となるカルチャーの違いがわかります。この「信頼」の指標というのは、取引先とビジネスを行う上での「信頼」が、ビジネスに関連した活動の「タスク」のよってに築かれるか、人と人、会社と会社とのあいだの「関係」をベースに築かれるのかという指標です。言い換えれば、相手の商品やサービスの質の高さや価格の安さなど、ビジネス上で提供されるものがビジネスの相手を選択する場合に重視されるのか、相手と自分との関係性を重視するか、という違いです。「頭でビジネスをするか、心でビジネスをするか」の差とも言えます。

この指標において、世界でもっとも「関係ベース」でビジネスをするのが、中国・インド・中東諸国などで、タイもそれらの国々と同じグループになります。これらの国々では、ビジネスの相手の選定理由は、同郷人である、出身大学が同じ、つまり育ってきた環境が同じなので、価値観や考え方が近い、性格が合う、生き方や人生の目的が近い、ウマが合いそう、といったことが選定の理由になります。こういったことを吟味して、裏切られることのなさそうな相手を選び、一旦選んだ相手とは、仲間として長期的な関係を結ぶことを前提としています。そしてその正反対に位置しており、最も「タスクベース」なのがアメリカです。続いて北欧諸国、オーストラリア、ドイツなどが「タスクベース」サイドの国々になります。これらの国々では、価格が安い、品質が良い、納期が早いといったビジネス上の直接的なメリットによってビジネスの相手が選定されます。こういった国々では、たとえ10年20年と付き合った相手だとしても、一旦価格が合わなくなれば、すぐにでも関係が解消されてしまうことにもなります。日本のポジションはというと、「関係ベース」サイドに位置してはいますが、タイよりは中庸に近いというポジションです。つまり、ビジネスの信頼において「関係ベース」は大切ではあるが、「関係ベース一辺倒というわけではない」というのが日本のポジションなのです。一方タイは中国と同じく「完全に関係ベース」であるため、まず相手の人となりを見極めなければビジネスの話は始まらない、というわけなのです。
確かにゴルフをというのは、相手の性格や人となりが現れるスポーツですので、信頼するに足る人物かどうかを見極めるために「まずはゴルフから」というのは理にかなっていると言えます。そんな時、日本人であるあなたは、せっかくの機会を逃すまいとしてグリーン上で「わが社の製品にはこんなメリットがあり。。」などと商談を始めたくなってしまうかもしれません。しかし相手は、この場では「あなたの会社の製品の話」を聞きたいのではなく、「あなたという人間」を見極めたいのだということを、肝に命じておく必要があります。まずは個人的な関係が築かれ、そしてあなたという人間が信用され、商売の話はそれからですよ、ということです。この場では、自社製品のメリットを言う機会を伺うのではなく、OBを打ち込んでカッとしてクラブを地面に叩きつけてしまったり、距離があわないのをキャディーのせいにして文句を言ったり、というような、人間としての品格を落とすようなことを決してせず、相手を思いやりながら朗らかにラウンドするということを心がけ、「この人と一緒にビジネスをやってみたいな」と思ってもらうことが肝心なのです。
前述のガンタトーン先生によれば、こういう時にタイ人どおしであれば、出身地や学校、友人関係の話などをして、会話や態度の中から相手の「育ち」を吟味しているそうです。日本人どおしであれば、あまり相手の「育ち」によってビジネスを共にするかどうかを判断するというメンタリティーはないかと思います。しかし、日本よりはるかに格差社会であるタイにおいては、育ってきた階級が違うと価値観や物の考え方が違うため、育ちの違う相手のことをビジネスのパートナーとして心底信頼することはできないということのようです。
ビジネスパートナーは必要。だが。。
タイのビジネス社会は、このような個人的信頼関係の連鎖で成り立っているため、外国人である我々が、その内側に食い込んでいくことは、なかなかハードルの高いことだと言えるでしょう。
もしあなたの会社の顧客ターゲットが日系企業のみで、意思決定者がすべて日本人なのであればその必要はありません。しかし標的顧客がタイ企業なのでのであれば、パートナーの見極めが、成功のためには最も重要なファクターであると言えます。その業界に顔の広い、多くのキーパーソンと信頼関係を結んでいるインサイダーとの関係を築くことができるかどうかが、顧客が獲得できるかどうかを決めてしまうことになります。
またタイには「外国人事業法」というやっかいな法律があります。一言で言えば、タイにおいて外国企業は製造業を行うことはできますが、小売業や卸売業、サービス業は(1億バーツ以上の莫大な投資をすれば別ですが)実質できないという法律です。したがって、自社工場で製造するもの以外のものを販売したり、自社工場で製造したものであってもその修理などの業務を行うためには、「内資企業」を設立する必要があります。内資企業の定義は資本の50%超がタイ国内資本であるということですので、これを行うためには現地のパートナーが必要となります。
しかしこの現地パートナーとの関係は、最初はうまくいったとしても、先々はビジネスが成功すればするほど厄介なものとなります。
<参考事例>
「信頼していた友人との合弁会社設立」
・事例の概要
タイでは、商業にかかわる会社は外国人を主株主としては設立できないため、家族付き合いをしていた古い友人であるタイ人の夫を「主株主の会長」とし、同人名義で51%を出資させ、日本人が「社長」として49%出資して1995年バンコクに素材関連の商社を設立した。資金はすべて日本人が提供した。
会社設立後、約8年の間、そのタイの友人は実質的に何の業務も担当せず、もっぱら日本人社長の孤軍奮闘で会社を運営してきた。その結果、ここ数年間は黒字化する事ができた。
それまでは会長、社長とも給与を30万バーツ(約100万円)としていた。2004年の決算も好調で、数千万バーツの利益が見込めることから、社長給与を80万バーツ(270万円)に上げることとし、会長給与は据え置きを提案したが、会長から強硬に同額にあげるよう要求を受けた。
元来、会長としては何の仕事もせず、名誉職ということで週に一度ほど役所関係書類に署名していただけ。給与30万バーツでもかなりの高額であると社長は感じており、この事が原因で一挙に相互の関係が悪化した。相手は外国人事業法による規制を盾に、外国人では本来できない事業を自分が参加する事でできるようになっているのだから、それ相応の待遇を受けるべき権利があると主張した。
・対処概要
外国人事業法では、1億バーツ以上の資本金であれば外資だけでも小売業あるいは卸売業ができる。(両方をやるには2億バーツ)また、資本金の払い込みは登記時25%で、その後の追加払い込みは役員会決済に委ねられるとの規定のため、取りあえず相手側の出資資本をすべて日本側社長が買い取り、増資をすることとした。本来は同人に貸し付けていた金額であったが、それも結局ほごにされ、その上株式額面の3倍で買い取る事で交渉が成立した。さらに1億バーツとの差額の25%の資本金を払い込み、100%外資企業とした。なお、商売の形態を小売業のみとし、卸売とみられる形態の商売はすべて整理するか、商い経路を変更して小売業態とした。
・教訓
ほかにも同じような事例はたくさんあり、立ち上げ後の苦難時代や資金の投入時にはタイ側は一切口出しをしてこないが、会社が利益体質になると介入してくる事がある。名義借りは違法であるため法廷には提訴できず、したとしても株式割合の権利が認定される。期間利益だけではなく、会社資産に対しても株主比率の権利を主張されるので、安易な名義借りによる企業設立は、慣例上容認されているとしても、違法行為と認識して強く注意する必要がある。
出典:「タイ日系企業が直面した問題と対処事例」 財団法人海外職業訓練協会 厚生労働省委託研究
筆者注:このような「名義貸し」はかつては慣例上黙認されていましたが、2006年以降はタイ側の出資者も厳しく審査されるようになっています。
このように、事業が成功すればするほど、合弁会社の火種は大きくなります。逆に失敗してお金を失ってしまった場合には、タイ側は元々実質的に出資していなければ、儲け話が不意になっただけですので揉め事にはならないのですが。またパートナー本人が義理堅い人であったとしても、ビジネス関係を結んだ当人が亡くなったり引退した時、後継者が同じように熱心にそのビジネスにコミットしてくれるとは限りません。その時、ビジネスが成功して利益を内部留保として積み上げていればいるほど、後継者からその内部留保の取り分である51%を現金で支払うように求められるというようなことは、よくあるケースです。もしあなたの会社が現地企業との合弁企業なのであれば、日本側の代表として「パートナー企業とうまくやる」ということも、非常に大事なミッションになっていることと思います。
そのような場合には、タイのカルチャーを理解しタイ人の考え方を踏まえた上で、ビジネスを進めていく必要があります。そのためには、まずは自分自身が相手に個人的な信頼を得るパートナーであり続けること、少しでも相手に不満があれば、火種が大きくならないうちに腹を割って話をして、落とし所を見つけていくということを継続していくしかありません。
合弁企業設立時の予防策
前述のように、タイにおいて製造業以外の小売業や卸売業、サービス業などを行うためには外国人事業法上の内資企業である必要があります。つまり、タイ国内資本がの50%超入っていなければならないということです。しかし合弁のパートナーに51%を渡してしまうと全ての決定権は合弁パートナー側に行ってしまい、将来的に合弁パートナーと考え方が合わなくなってしまった時に、日本側としてはなすすべがありません。
すでに相手に51%を取られてしまっている場合には、前述のようにパートナーとの個人的信頼を継続していくしかないのですが、これから設立するのであれば、相手のいいなりになってしまう決定的な事態を避ける方法はあります。
1.合弁相手を日系の投資会社にする
その方法の一つ目は、合弁相手を日系の投資会社にすることです。実は、内資企業といっても必ずしもタイ人が経営している会社でなくてはならないということではありません。資本の過半数を日本の企業が握り、日本人が経営している内資企業も数多くあります。
「資本の過半数を日本の企業が握っていながらタイの内資企業」とはどういうことなのでしょうか?
これは「外資企業の子会社は外資企業、内資企業の子会社は内資企業」という定義があるからです。
ここに、日本企業が49%、タイ企業が51%を出資したA社があるとします。その会社は内資企業です。その内資企業A社が51%、別の日本企業B社が49%を出資する子会社C社を作れば、C社も内資企業になります。内資企業が50%超を出資していれば内資企業なのですから、C社には74%日本人の血が流れていても、国籍としてはタイ人ということになるのです。さらにこのC社が51%、別の日本企業D社が49%出資したE社を作れば、E社は87%日本の血が流れたタイ人ということになります。
具体的な方法としては、日系の投資会社を合弁相手とする方法があります。日本のメガバンクや大手コンサルタント会社などが、傘下に投資会社を持っています。これらの会社は日本のメガバンクやコンサルタント会社がタイのパートナーと設立した会社であり、タイ内資企業です。これらの投資会社に51%を出資してもらえば、内資企業を作ることができます。そして当然のことながら、投資会社のタイ側パートナーが孫会社の経営内容に口出ししてくることはありません。
しかし、経営内容には口を出さないものの、出資金に対して年率10%超といった高額の配当が要求されるケースが多いようです。しかも出資額相当の預金を担保として日本のメガバンク口座に置いておかなければならないというような条件もつくとのこと(この辺は日本の親会社の信用力やそのメガバンクとの関係性次第)。これはつまり、メガバンク側からするとノーリスクで年利10%を稼いでいるわけであり、出資を受けるほうからすると経営に大変大きな負担になります。「経営に口を出さない」ということは助けてもくれないということですので、前述の「タイ社会のインサイダーとしてのパートナー」という意味では役にはたたず、顧客探しは独力で行わなくてはならないことになります。
2.第三者に少額の出資をしてもらう
もう一つの方法は、信頼できる第三者に少額の出資をしてもらうという方法です。たとえば、自社の出資を49%、タイ側のパートナーの出資を48%とし、残りの3%を投資会社に出してもらうというやり方です。この方法であれば、相手の持分は自社を下回るため、経営権を取られてしまうことはありません。こういった出資サービスを、私も在タイ時に色々と相談をしてお世話になった、「東洋ビジネス」というコンサルティング会社などが行なっています。
コンプライアンスは重要です。でもその線引きは?
このように、タイにおいては個人間の「関係性」がビジネスを決めます。ということは、この「個人間の関係」を構築するために、様々な手段がとられることになります。そしてその手段は、会食だったりゴルフだったり、年末にはお歳暮(のような習慣がタイにもあります)を届けたり、ということが日常的に行われることになります。ある程度以上の年齢の方には、「昭和時代の日本」のお付き合いだと理解していただければよいと思います。
一方で、国際的なビジネスの規範やルールは、アメリカの基準でできています。そのアメリカ基準で言えば、そういったタイの慣行は「クリーンではない」と映ります。最も安価であったり最も品質が高かったりするものを選ばず「相手との関係性」をベースに取引をする、しかもその「関係性の構築」のためには接待やプレゼントなども介在するというタイでのビジネスのやり方は、「クリーンではない」どころか「真っ黒」だと言えるでしょう。
しかしアメリカ基準から見れば、日本人が当たり前だと思っている自動車業界における「ケイレツ内取引」も閉鎖的でクリーンではない取引関係で「はびこっている悪」だと映っているのです。
それは、アメリカが世界で最も「タスクベース」の端っこに位置する文化を持っていて、そのアメリカの文化が「正しいこと」だとアメリカ人が思っている。そしてその「アメリカのルールで世界が運営されるべきである」と信じており、さらにはそのアメリカのルールを国際ルールとして通用させる力がアメリカにあるからなのです。
一方「関係ベース」寄りに位置しながらも、タイや中国から見ると真ん中に近いポジションである日本人から見ると、長期的な信頼関係や、いざという時にお互いを支え合う「持ちつ持たれつ」でビジネスを永続しようという考えを一切否定して、その場その場での短期的な値段や品質「のみ」でしか取引することを認めないアメリカ人の考え方は、あまりにも近視眼的であると映ります。
その一方でタイ人の「タスクより関係性」で取引を進めようとする考え方も、「それはあまりにもズブズブすぎるのでは」と映ります。そしてそんな日本人の感覚は、タイ人の常識から見れば「ドライすぎて、そんなことではビジネスはできない」と映っていることでしょう。
また、同じ「関係ベース」ではあっても、日本とタイとでは対象の違う「関係ベース」です。日本のビジネスが「会社対会社の信頼」で成り立っているのに対し、タイでは「個人対個人の信頼」でビジネスが成り立っているからです。組織としての会社を信用するのではなく、その人個人を信用するのです。タイでは、やり手の営業マンがライバル会社に転職したら、お客さんがみんなそちらの会社に移った、ということが聞かれます。日本であれば「会社対会社」で信頼関係を築いていきますので、営業担当者が会社を変わったからといって取引先をそこに変えると言うことは考えにくいと思いますが、タイでは会社ではなく個人が信頼の対象ですので、そのようなことが起こりえるのです。
そんな成り立ちのタイ社会ですので、タイのルールは日本人から見ると(ましてアメリカ人から見たら)「ありえない」ものもあります。たとえば、あなたの会社の購買の担当者が納入業者から個人的にキックバックをもらっていたとします。それが発覚したとすれば、日本であれば罰せられるのが当然です。良くて左遷や降格、悪ければクビになるのが普通だと思います。
しかしタイではキックバックを受け取っているからといって罰することはできないのです。罰するためには、「そのキックバックによって会社が損害を被った」ということを会社側が証明する必要があるのです。
たとえば見積もりよりも高い金額で購入してその差額を受け取ったのであれば、それは「会社の金を盗んだ」ということになりますから、その行為を罰することができます。しかしたとえば、相見積もりを取って安い方から購入していたとしたら、あるいはたとえば、元々値段の高い日系企業から買っていたものを現地企業に変えた時に、変えることによって購買価格を下げつつ、その業者から付け届けを受け取っていたとしたら、賄賂を受け取ったことがにより直ちに「会社が損害を被った」ということにはなりません。取引相手の会社が、その取引を得るために自分の利益の中から贈り物をしたとしても、タイにおいてそれは悪いことではないからです。
それは日本人が、取引相手との会食の費用を持ったり、お中元やお歳暮を贈ったりすることを「悪いこと」だと思わないのと同じなのです。相手からの付け届けを受け取ったからと言ってクビにしたとしたら、アメリカ系企業に勤めている日本人が「お中元を受け取ったらクビになった」というのと同じように感じるということなのです。
賄賂や付け届け、キックバックといったものが、どこまでが許されて、どこからが許されないものなのか。下にあげた仕入先との付き合いの中で、あなたはどれが許されるものでどれが許されないものだと判断しますか?
1 来訪時に手土産のお菓子をいただいた
2 会食の飲食代を出してもらった
3 お歳暮に、カルピス詰め合わせ(3千円相当)をいただいた
4 お歳暮に、高級ウィスキー(1万円)をいただいた
5 お歳暮に、スーツに仕立て券(5万円)をいただいた
6 お歳暮に、金の盃(30万円相当)をいただいた
おそらくほとんどの方は、3までは問題ない、4はグレーゾーン、5は問題あり、6は完全に犯罪といった判断をされると思います。ではその判断の根拠は何でしょうか?なぜカルピスはOKなのに、仕立て券だと問題があるのか?これは「社会通念上許される範囲なのかどうか」という判断だとしか言えません。つまり「社会通念」が違えば判断も違ってくるのです。
このように、カルチャーの違いによってルールは当然に違ってきます。しかしながら前述のように、国際的なビジネスのルールはカルチャー的に反対の端に位置しているアメリカが支配しています。ですので、タイ的なビジネスにどっぷりと浸かってしまうと、日本の本社から見たり、国際基準から見れば明らかに「悪いこと」を見過ごすことになります。かといって、「タイではこれが普通なので。。」というようなことをいくら主張したとしても、本社が理解してくれることはないでしょう。
この二律背反は、タイだけではなく新興国でビジネスを行う日本人のネジメントには常に付きまとう、非常に厄介な問題です。東南アジアにおいては、この問題と無縁でいられるのはシンガポールだけだと思います。非常に頭の痛いところではありますが、日本の常識とタイの常識の両方を理解しつつ「落とし所を見つける」ことが必要となります。
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