あなたがタイ人に仕事上のことで叱責をしたとします。そんな時彼らは、必ず言い訳をしてきます。そしてその言い訳を認めないと、最後は子供のような低次元の理由まで持ち出してきて頑として非を認めないということがよく起こります。日本人にとっては、その叱責の原因のなった出来事よりも、この「言い訳ばかりして自分の非を認めない」という態度そのものが怒りに火をつけてしまい、感情的な対立に発展してしまうことが起こります。これは、タイ日系企業での労務問題の発生の根っことなる要因として、典型的なケースです。
ではなぜ、タイ人は言い訳ばかりして素直に謝らないのでしょうか?
それは、タイでは「謝れば許される」わけではなくむしろ「謝れば罰せられる」からです。日本人からすると「言い訳ばかりしやがって。素直に謝れば許してやるのに」と思うのですが、この「謝れば許される」というのは実は、日本人の独特なカルチャーなのです。そしてこの、日本の「謝れば許される」というカルチャーが世界共通のものだと思い込んでいることが、すれ違いが発生する根本的な原因となっているのです。このことは、タイの日系企業における労使の問題ということにとどまらず、日本と海外の国々との間で発生している多くの問題の真因ともなってしまっています。日本人は「謝れば許される」と信じて謝るが、受けた方は「謝ったと言うことは、罪を認めたと言うこと」と捉え、許すどころかさらにたたみかけてきて罰する、というすれ違いを生じさせるのです。
日本人のマネジメントとしては「謝れば許される」のは日本独自のカルチャーであり、むしろ「謝れば罰せられる」が日本以外での常識であることを心得ておく必要があります。「謝れば罪を認めたことになり罰せられる」というカルチャーの中では、どんな言い訳をしでも罪を認めないというのは、当然の行動であるのです。そして「謝るということは自分の非を認めることであり、罰を受けることを認めること」ということが、タイを含めた日本以外では常識であることは、日本人自身の行動の中でも肝に命じておかないとトラブルの元になってしまう、大事なポイントとなります。これはよく言われることではありますが、例えば交通事故に巻き込まれてしまった時に、うっかり謝まってしまったためにすべてこちらの責任になってしまった、などということは、タイに限らず日本以外では当然起こり得ることなのです。
「問題が発生した時には言い訳せず、まず謝罪する」というのがあるべき態度だという考え方は、日本人の間でしか通用しません。「タイ人が言い訳ばかりして謝らない」のではなく、「日本人が言うべきことも言わずに謝りすぎ」なのです。
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